丈夫で育てやすく、精油や薬としても利用されてきたユーカリ
ユーカリは、フトモモ科ユーカリ属に分類される常緑性高木になります。
オーストラリア、タスマニア島、ニュージーランドに自生し、大きいものでは70~100mもの巨木に生長します。
種類も多く、600種ほどあるといわれていますが、その中でもコアラが食べるものは12種ほど、精油として用いられるものが数種ほどあります。
その中でもよく利用されるものに、ユーカリ・グロブルス、ユーカリ・ラディアータ、ユーカリ・ディベス(ユーカリ・ペパーミント)、ユーカリ・スミティー、ユーカリ・ヴィミナリス、ユーカリ・レモンなどがあります。
学名の語源は、eu-(真に、強く、大切に)+calyptos(つつまれた)=「良い蓋」を意味するギリシャ語をラテン語化したものです。
つぼみのがくと花弁が合着して蓋状になること、乾燥地でもよく育ち大地を緑で覆うことに由来しているといわれています。
和名の「ユーカリ」は、Eualyptusを短縮したものになります。
日本には明治10年頃、種子が持ち込まれ大正時代中頃に植えれば空気がきれいになるという栄転があることから「有加利」の当て字が使われていたそうです。
ユーカリは、マラリアなどの感染症の治療に使われたことから「熱の木」「熱さましの木」とも呼ばれています。
先住民のアボリジニは、ユーカリを「キノ」と呼び、傷口や虫刺され、チフスやマラリアなどの伝染病の治療に用い、悪化した傷や、深い切り傷には包帯の代わりにユーカリのおしべを巻いていたそうです。
ユーカリの精油には、抗菌作用、刺激作用、抗炎症作用があり傷などの外傷薬として、また内服薬として、扁桃腺、咽頭炎にも効果があります。
その他にも免疫グロブリン作用を増強させ、免疫機能を高める働きがあり、体温を下げ体に対して冷却作用やデオドラント作用もあるため、様々なタイプの熱病にも使用されています。
そのように良い効能がある一方で、青酸配糖体という成分も含まれていることからその毒性にも注意が必要です。
この有毒成分は青梅にも含まれており、外用するする分には問題ありませんが、誤飲すると喘息の悪化や食あたりを起こす可能性がありますので注意しましょう。
ユーカリの自生地では、乾燥した天気の良い日にはユーカリが一斉に精油を蒸発させることで、木々の上にブルーに見える空気の層ができる現象がおこり、それを「Blue Haze」と呼ぶ幻想的な風景が見られることもあるそうです。
ユーカリはアルカリ土壌でもよく育ち、根を深く伸ばして水を吸い上げる力が強いことから砂漠化した地域の緑化に利用されることもあるなど、色々な用途で利用される利用価値の高い植物です。
ユーカリの土について
ユーカリはアルカリ土壌でも育つ強靭な性質を持っています。
ただし、乾燥気味を好み過湿を苦手としますので、市販の培養土では水もちが良すぎてしまいます。
使用する際には、ハーブ用の土か観葉植物用の粒状培養土などを利用するとよいでしょう。
自作する場合には、市販の培養土に鹿沼土か桐生砂を2割ほど混ぜるとよいでしょう。
それぞれの土についてはこちらで詳しく紹介していますので、参考に。してみてください
ユーカリの肥料について
ユーカリはあまり肥料を必要としません。
鉢植えの場合には、植え付けの際に元肥として緩効性肥料を混ぜておけばそれで充分です。
地植えの場合には、生育期に緩効性の固形肥料を与えてやるとよいでしょう。
ただし肥料は少なめに与えるようにします。
ユーカリの植え付けについて
ユーカリは移植を嫌いますので、地植えなどでは一旦植えてしまうと植え替えることはできませんので、植え付けはよく検討してから行うようにしましょう。
鉢植えの場合は、根鉢より一回り大きな鉢に植え付けるようにしますが、大きくしたくない場合には同じ大きさの鉢に植え付けてやるようにしましょう。
植え付けの適期は、4~8月頃になります。
ユーカリはとても生長が早いため、鉢植えなど大きくしたくない場合には余計な根を切り、根の負担も減らすため地上部の枝も半分ほどに切り詰めてやるようにします。
成長が旺盛なため、植え替えは2~3年に1回は植え替えてやるようにします。
地植えの場合には、根鉢の2倍程度の深さと大きさの穴を掘り植え付けてやるようにします。
粘土質で水はけの悪い土に植え付けると根腐れしてしまうので、そのような場所は避けるようにしましょう。
ユーカリの種まきについて
ユーカリの自生地では、葉から放出される引火性のあるテルペン類が、気温の高い夏期に濃度が高くなり山火事の原因になることがままあります。
しかし、ユーカリの木の樹皮は非常に燃えやすいのですが、火が付くと幹から剥がれ落ち、幹の内側の形成層は燃えずに守られるようになっています。
その上、根に栄養を蓄えているため火事の後でも成長し続けることが可能で、12~24時間で新しい芽を付けます。
これはユーカリの葉から作られる成長抑制成分によるもので、火事により成長を抑えられていたものが葉が焼け落ちることにより発芽するためです。
このようにユーカリは火事をきっかけとして発芽する性質がありますので、少し乱暴なようですが、種をまく場合にはフライパンで炒めてからまくようにします。
ですが、種は手に入れにくいので種まきでは育てず苗を購入して育てるのが一般的です。
ユーカリの日当たりについて
日光を好みますが、半日陰でも十分育ちます。
品種により夏の暑さに弱い品種もあるため、そのような品種のものは半日陰で管理するようにしてやりましょう。
日当たりがよいとよく育ちますので、あまり大きくしたくない場合には日当たりにも注意して管理してやるようにします。
ユーカリは大きく育つ樹木ですが、根が浅くはる性質があるため強風には弱いので管理する際にはその点にも注意してやるようにしましょう。
ユーカリの水やりについて
過湿を嫌いますので、水やりのし過ぎに注意するようにします。
土の表面が乾燥したら、鉢底から流れ出る程度たっぷりと水やりを行うようにします。
ユーカリは多湿な環境では根腐れを起こしてしまいますが、水を嫌う訳ではなく、夏の高温期に生育するのであれば、品種によりますがむしろ水は非常に欲しがります。
ユーカリは根が浅く生える性質があり、その代わりに広範囲に広がります。
そのため大きく育つにはかなりのスペースが必要になります。
ですので、鉢植えなど限られたスペースで管理すると、小さくまとまってくれます。
ユーカリの摘心、剪定について
ユーカリはどんどん伸びるので、全体のバランスを整えるように摘心を行ってやるとよいでしょう。
枝先にある芽を事前に取り除くことで脇芽を発生させ、枝を増やしたり葉を大きく生長させることができます。
枝先だけでなく葉の節でカットすれば、そこからも脇芽が生えてきますので様子を見ながら行うようにします。
剪定に適した時期は春(3~5月)と秋(9~10月)になります。
剪定する際には、全体のバランスを見ながら枝を切り、反対側の景色が透けて見えるような透かし剪定をするようにします。
伸びすぎたり混みすぎたりしている枝は適当に透かしてやり、枝の密度を適正にすることで日当たりや風通しを改善することができます。
またユーカリはよく伸びるので、根が浅くはる性質があり風などで倒れやすいので適宜支柱などをしてやるとよいでしょう。
ユーカリの挿し木について
ユーカリは挿し木で増やすことができます。
挿し木の適期は、6月中旬から7月頃になります。
新しく伸びた枝を10cm程度切り、下葉をとってから切り口を斜めにし、水あげをしてやるようにします。
湿らせた土に挿し、明るい日陰で管理すると約2~3ヶ月で発根します。
挿し木については、ラベンダーですが詳しく説明していますのでそちらも参考にしてみてください。
挿し木の土や鉢についてはこちらで詳しく紹介しています。
ユーカリの温度について
品種により暑さに弱いものや寒さに弱いものがあります。
暑さに弱いものは、夏場には半日陰で管理してやるようにします。
寒さに弱いものは、冬は室内にとりこんでやるようにします。
ユーカリの病害虫について
過湿を嫌いますので、水やりのし過ぎには注意するようにしましょう。
根をコガネムシの幼虫が食べることがありますので、オルトランなどをまいて予防するようにします。
ハダニやうどんこ病が発生することもありますので、発見した場合には早めに薬剤を散布するなどして防除するようにします。
その他にも、ユーカリは鉄分が不足するとクロロシスを起こします。
クロロシスとは、葉緑素が抜けて白くなってしまったり、黒いブチが見られる症状です。
病気ではないのですが、クロロシスを起こすことで病害虫への耐性が低下してしまい、結果的に他の病気(うどんこ病など)に罹りやすくなってしまいます。
これを防ぐためには、鉄分補給の栄養剤を与えるようにするとよいのですが、一度クロロシスを起こしたところは元に戻ることはありません。
また、ユーカリは弱酸性の土から鉄分を吸収するため、アルカリ性の土からは鉄分を吸収できません。
そのため、植え付ける際に苦土石灰を混ぜ込まないようにする必要があります。
色々と有用な効果があり、見た目も美しいユーカリ。
あなたもユーカリを育てて、ガーデニングを楽しんでみませんか?
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