とても人気の高い蘭、花を咲かせやすいデンドロビウム
デンドロビウムは、胡蝶蘭と並んで贈答品などとしても贈られる人気の植物です。
デンドロビウムという名は、1799年スウェーデンの植物学者Swartz氏がギリシャ語のDendron(=tree 樹木)とbios(=life 生命、生活)から、「樹上で生活する」という意味で名づけられました。
デンドロビウムは、その名の通り樹上で生育する着生蘭になります。
デンドロビウムの原種は、1000種以上もあるといわれ現在でも新種が発見されるなど、種類の豊富さを誇っています。
デンドロビウムは耐寒性があり、株が凍らなければ枯死することもない丈夫なランです。
多肉状の茎に節があり、その節々に花芽をつけて開花します。
通常の開花期は春ですが、温室で管理し春に限らず開花株が販売されています。
デンドロビウム属の系統には、「ノビル系」や「デンドロビウム・ファレノプシス系(胡蝶蘭)」などがあり、単に「デンドロビウム」というときには「ノビル系」を指すことが多くなります。
「ノビル系」は、タイ、ミャンマー、インド、ラオス、中国の雲南地方を中心に分布しておりデンドロビウムの中でも最も種類が多く普及しているタイプになります。
日本のセッコク(石斛)もこの系統に分類され、江戸時代にはすでに「長正蘭」の名前で園芸品種として栽培され親しまれています。
「ノビル系デンドロビウム」は数多くの交配種が作出され、園芸品種として広く栽培され愛好家も非常に多い植物です。
デンドロビウムの植え込み材について
デンドロビウムは、着生植物になりますので一般的な土に植え付けると根腐れを起こしてしまいます。
植え付けには、水ゴケを使用する方法が歴史的にも長く栽培方法も確立しています。
なるべく小さめの素焼き鉢を用意し、水苔で植え付けるようにします。
その他にも、ベラボン(ヤシガラ)やバークチップを使用している場合も多くなっています。
ベラボンは、使用前に必ずあく抜きをしておく必要があります。
1週間ほど水につけ、毎日水を交換するようにします。
水の代わりに40℃くらいのお湯を使うとより効果的になります。
ベラボンのみで植え付ける場合には、やや固めに押さえつけて植えるようにします。
バークチップは水苔に比べて乾きやすいため、根腐れの心配がなく低コストというメリットがあり近年よく利用されるようになっています。
植え付ける際には、根の隙間が空きやすいため割りばしなどで付きながらバークチップを足していくようにするとよいでしょう。
どちらにしても、植え替えなどの際の植え込み材は、元々使用されていたものと同じものを使用するようにしましょう。
デンドロビウムの植え付けについて
デンドロビウムは発芽しにくく、種をまいて育てるのが難しい花ですので、基本的には苗から育てるのが一般的です。
3月下旬から5月頃の暖かくなった時期に苗を植え付けるようにします。
植え替えの後10日ほどは、直射日光を避けて明るい日陰で管理してやるようにします。
植え替えは2年に1回程度行うのが一般的です。
鉢から根がはみ出していたり生育の悪い株は植え替えの対象です。
春の花後に植え替えは行ってやるようにします。
デンドロビウムの肥料について
3月下旬から、油粕と骨粉を配合した固形肥料などを月に1回与えるようにし、液肥は薄めて月に2~3回程度与えるようにします。
置き肥は7月上旬まででやめ、液肥も控えるようにします。
9月以降は花芽作りのためにリン酸分の多い肥料を与えるようにしましょう。
10月以降は肥料は与えないように注意します。
デンドロビウムの日当たりについて
春、気温が15℃を超えるようになったら屋外へ出して徐々に日光に当てるようにします。
夏場は広葉樹の下などの明るい日陰で管理するのが理想的ですが、半日陰になる場所に吊るして風通しのよい場所で管理してやるのもよいでしょう。
秋は、日照時間がバルブの充実に大きく影響しますので、よく日光に当てるようにしましょう。
不足すると花芽ができず、高芽ができる原因になってしまいますので注意するようにします。
冬場は、6℃を下回るようになれば室内に取り込むようにし、1日に4~5時間は日光の当たる場所に置いてやるようにしましょう。
デンドロビウムの水やりについて
デンドロビウムは春に花が終わると成長期に入ります。
気温が上昇するのに合わせて、水やりの回数も増やすようにしましょう。
新芽が成長してくると水を欲しがるので、鉢の表面が乾いたら水やりを行ってやるようにします。
梅雨後には、乾燥に注意して朝夕2回十分に水やりを行ってやるようにしましょう。
秋、バルブの頂点に止め葉が現れたら、水やりの回数を減らすようにします。
鉢の表面が乾いてから1日後くらいに水やりを行うとよいでしょう。
11月からは1週間に1回、12月は10日に1回、1~2月は月に1~2回を目安に水やりを控えめに行います。
冬に温度が保てない場合は、乾燥気味に育てるのがポイントです。
デンドロビウムの花がら摘みについて
デンドロビウムは1カ月程度花を咲かせます。
花はバルブと呼ばれる茎から直接咲きますが、花が枯れてきたらバルブは切らず一つひとつの花の根元から指で摘み取るようにします。
一度花が咲き終わったバルブからは、もう花は咲きませんが全ての花が終わっても、このバルブは切ってしまわないようにします。
バルブに残っている栄養分を吸収しながら、次の新芽を成長させるのでバルブは株の充実に必要だからです。
2年ほどするとバルブは萎れてきますので、そうなってから切り取ってやるようにします。
デンドロビウムの高芽とり、茎挿し、株分けについて
デンドロビウムは、冬から春にかけて茎の途中から出てきた子株(高芽)が出てしまうことがあります。
この高芽は、管理がよければ花芽になっていたかもしれない芽です。
葉が2~3枚つき白い根が出てきたら切り取って水ゴケなどに植え付けてやれば増やすことができます。
苗は大体2~3年で開花します。
高芽は放置したままにしておくと茎から栄養を奪ってしまうので、葉が2~3枚ついて根が出たら切り取ってやりましょう。
時期は4~6月頃が適期ですが、気温のある9月頃までは行えます。
またデンドロビウムは、茎を節と節の間で切り、それを挿し芽にする茎挿しで増やすこともできます。
その他にも、株分でも増やすことができます。
株分けは少々根が切れても大丈夫ですが、なるべく根を傷めないようにハサミなどを使用して上の方を切り分け、根の方を丁寧に手で裂くように分けます。
適期は芽吹く頃の春の植え替えと同時に行うようにするとよいでしょう。
デンドロビウムの支柱立てについて
花が咲くとデンドロビウムは食いが下がってくることがありますので、支柱で支えてやるようにします。
支柱はラン用の細いタイプを利用するとよいでしょう。
デンドロビウムの温度について
デンドロビウム(ノビル系)は寒さに強いので、温室などがなくても春に花を咲かせることができますので、ビギナーさん向きの蘭といえます。
いくら寒さに強いとはいえ、春は夜温が15℃を超えるようになるまでは室内で管理するようにしてやりましょう。
15℃を超えるようになれば戸外で管理できます。
元々着生植物の為、夏場は広葉樹の下などの涼しい場所か、半日陰になる場所で吊り下げて管理してやるようにしましょう。
冬は、気温が6℃を下回るようになったら室内に取り込んでやります。
デンドロビウムは、冬の寒さに当てることも花芽を分化させるのに欠かせません。
また冬バルブが完成すると、葉が落葉します。
デンドロビウムの病害虫について
夏にバルブが大きく育ち、みずみずしい葉がつく頃から秋口にかけ、葉に黒い斑点が出ることがありますが生育に大きな影響はありません。
新芽や花芽はナメクジの食害を受けやすいため、春の新芽の時期と冬から春の花芽の時期は特に注意します。
カイガラムシは1年中発生します。
茎の汁を吸って株を弱らせますので、成虫になる前に殺虫剤を散布するか成虫になった後はブラシなどでこすり落とすようにします。
カイガラムシは幼虫の間しか殺虫剤が効きませんので、日常からよく観察して早めに駆除するようにしましょう。
ランの中では花を咲かせやすく、耐寒性もあり愛好家も多いデンドロビウム。
美しい花を楽しませてくれるデンドロビウムをあなたも育ててガーデニングを楽しんでみませんか?
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